アレルギー疾患:抗原と抗体、アレルギー、喘息、花粉症、アナフィラキシー、薬物アレルギー、消化管アレルギー

アレルギー反応の型

アレルギー反応は、原因への曝露から反応までの時間、介在する抗体の種類、反応に関係する細胞の種類によって、4型に分類されている。

I型アレルギー

即時型 15〜20分
IgE が介在 (IgG4の場合もある)=レアギンと呼ばれる

肥満細胞や好塩基球の細胞膜表面の高親和性IgE-FcレセプターとIgE抗体が結合し、抗原がIgEに結合するとヒスタミンその他のケミカルメディエーターが分泌され反応が起こる。

アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、花粉症、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性胃腸症などの発症機序に関与している。

II型アレルギー

即時型
IgG, IgMが介在する

抗体が結合した標的細胞が補体の作用により、あるいは食細胞に貪食されることにより、傷害され、溶解される反応である。(CDC: complement-dependent cytotoxicity, ADCC: antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)。

不適合性輸血、自己免疫性溶血性貧血、免疫性顆粒球減少症、免疫性血小板減少症、尋常性天疱瘡、重症筋無力症などの発症機序に関与している。

III型アレルギー

即時型(6〜8時間)      
IgG, IgMが介在

抗原と抗体が結合して形成される免疫複合体immune complex (I.C)が組織に沈着し、補体系が活性化されて生じる組織傷害。

血清病、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、多発性動脈炎、過敏性肺臓炎、血管炎などの発症機序に関与している。

IV型アレルギー

遅延型(24〜48時間)     

Tリンパ球が介在。

感作Tリンパ球と抗原が反応して種々のリンフォカインが産生、放出されて起きる。抗体、補体は関与しない。

アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性脳炎、移植拒絶反応、結核(ツベルクリン反応他)、自己免疫性疾患の病変の一部、ウイルス感染細胞に対する反応などに関与している。。

定義と歴史的背景

定義:アレルギーとは「免疫反応に基づく全身性ないし局所性の障害」である。

歴史的背景:Allergy(1906年Pirquetが″変化した反応能力″という意味のギリシャ語に由来する言葉として初めて用いた)=Hypersensitivityとも呼ばれる。

アナフィラキシーAnaphylaxis:抗原抗体反応の結果、ショック症状を引き起こす。1902年PortierとRichetがイソギンチャクの毒素をイヌに注射する実験で発見。

Behringと北里はジフテリア毒素、破傷風毒素に対する抗血清を作製。

免疫反応の分類
1. Humoral immunity体液性免疫:抗体:IgG, A, M, E, D (Ig= immunoglobulin 免疫グロブリン)
2. Cellular immunity細胞性免疫:リンパ球、マクロファージなど

アレルギーの検査法

IgE抗体の検出:
RIST(radioimmunosorbent test):血清IgE濃度を測定する方法。正常では600ng/ml以下。
RAST(radioallergosorbent test):ダニ、ハウスダスト、スギ花粉、食物、そのほかの抗原に対する特異的IgE抗体を血清で測定する方法。

貼付試験:アレルギー性接触性皮膚炎の原因抗原を調べる。
誘発試験:眼粘膜反応、鼻粘膜試験、気管支吸入試験。
除去試験:食物アレルギーの場合など。


薬物アレルギー検査法:
LST lymphocyte stimulation test
 末梢血をヘパリン採血しリンパ球を単離して被検薬剤の希釈液と培養する。リンパ球が幼若化しアイソトープあるいは蛍光色素をラベルしたチミジンの取り込みが高まれば陽性。
皮膚試験                 
1. パッチテスト(貼付試験)
2. 皮内試験
3. 乱刺試験

IgEとは

形質細胞から産生されるタンパクの1つ。抗原結合部位の多形性に富む。
heavy chain & light chain
MW 190,000
血清中に正常では10-100 ng/ml
肥満細胞(mast cell)と好塩基球 (eosinophil)はIgEのFc部分に対する高親和性レセプターFcεR I を持ち、長期間固着する。

花粉症 Pollinosis

次の3つの疾患がある:

1.アレルギー性鼻炎:呼吸時の吸入抗原による鼻腔粘膜における抗原抗体反応に由来するもの
2.アレルギー性結膜炎
3.花粉喘息

(枯草熱hay feverは別名)

IgEによるI型アレルギーの典型。局所の肥満細胞、好塩基球に結合したIgEにアレルゲンが結合して、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランディンなどを分泌して症状が引き起こされる。
        
春(2ー4月):杉、ヒノキ、栗、白樺 
春(2ー4月):温室イチゴ、桃、りんご 
春〜夏(4〜6月):雑草     
春〜夏(5〜6月):シラカンバ   
夏〜秋(8〜9月):ブタクサ、ヨモギ 
秋(9〜10月):カナムグラ

検査:RASTで値の高いものほど症状が著明。
診断:季節性とRASTで診断する。

治療:
抗ヒスタミン薬などの内服

Intal nasal drop
Intal eye drop
副腎皮質ホルモンのスプレー



アナフィラキシー Anaphylaxis

1)アレルゲンに感作される準備期間あり、2)微量のアレルゲンに接触すると起きる。アレルゲンが経静脈投与された場合の方が経口、経気道よりも強い反応が起きやすい。

入院患者の約2000人から5000人に1人くらいに起きるまれな疾患といえる。

アトピーの人が薬剤によるアナフィラキシーを起こしやすいということはないが、起きると死亡率は高い。X線造影剤に対するアナフィラキシーや食物などに対するアナフィラキシーは一般人口よりもアトピーの人の方が高い。

免疫学的機序によるアナフィラキシー、すなわち、IgEまたはIgG4-mediated anaphylaxisと、そうでないものがある。

免疫学的機序によらないアナフィラキシーはアナフィラキシー様反応、あるいは、Non-IgE-mediated anaphylaxisと呼ばれる。

いずれの場合も、ほぼ治療は同じ。

症状
アレルゲンの体内侵入の直後(通常5から10分、早いと30秒以内。30分以上かかることはまれ)に、口内異常感、口唇のしびれ、喉頭部狭窄感、嚥下困難感、四肢末端のしびれ、心悸亢進、悪心、耳鳴、めまい、胸部不快感、目の前が暗くなる、虚脱感、四肢冷感、腹痛、尿意、便意などを認める。他覚的にはくしゃみ、咳嗽、皮膚紅潮、じんま疹、血管運動性浮腫(眼瞼、口唇)。

じんま疹と血管運動性浮腫がもっとも高頻度(88%)に出現する症状である。

吐気と腹痛も30%の症例で認められる。

時に血圧低下、気道閉塞による呼吸困難、意識障害などのショック=hypovolemic shock症状をきたす。まれに死に至ることがある。ショックは30%の症例で起きる。

適切な治療により10から15分で改善し、1から2時間で回復。死亡の多くは喉頭浮腫・不整脈による。

5-20%の例は、2相性に1-8時間後に再度症状が出現したり、治療しても48時間も症状が持続することがある。

発症機序

アレルゲンとIgE抗体の結合→肥満細胞 mast cell、好塩基球 basophil

→ヒスタミン、プロスタグランディン(PGD2, PGF2a),ロイコトリエン(LTB4, LTC4, LTD4, LTE4)、血小板活性因子、トリプターゼなどのケミカルメディエーター

→血管透過性の亢進、血管拡張、気道平滑筋の収縮、自律神経系刺激、粘液の分泌、血小板凝集、炎症細胞の動因(数時間後の症状の再出現に関与)

→症状

原因物質

IgE-mediated:
アレルゲンは異種タンパクや薬剤が多い:
天然のもの 
 昆虫(ハチ、アリなど)
 蛇毒
 食物(ナッツ、穀物、卵、シーフード、牛乳)
医療に関係するもの
 抗生物質(ペニシリンなど)
 化学療法剤
 非ステロイド系抗炎症薬
 臓器・酵素・ホルモン製剤
 異種血清・ワクチン・毒素・アレルゲンエキスその他異種蛋白多糖類
 局所麻酔薬
 造影剤
 プラスチック製手袋(ラテックス)

Non-IgE-mediated:
Mast Cellから直接メディエーターを放出させる物質により引き起こされる場合:
・薬剤(麻薬系鎮痛薬)
・神経筋ブロッカー
・高張液(マニトールなど)
・運動

免疫複合体/補体による場合:
・血液や血液製剤
・ガンマグロブリン
・抗血清
・透析膜

アラキドン酸代謝に影響する物質により引き起こされる場合:
・NSAID
・アスピリン

複数の機序あるいは未知の場合:
・造影剤
・保存剤
・特発性アナフィラキシー

アナフィラキシーの治療

A: air way,
B: breathing,
C: circulation,
D: definite therapy

気道の確保
人工呼吸
輸液路の確保
アドレナリン:0.1%、0.3〜0.5mlS.C、またはI.M.,×3、20分間隔

ステロイド:ソルコーテフ 100〜500mg I.V.

じんま疹Urticaria

発赤、かゆみを伴う膨疹で、数分から数時間後に痕跡なしに消失する。真皮上層の浮腫である。

アレルギー性のものと非アレルギー性機序のものがある。

主なタイプ:
 急性及び慢性じんま疹
 血管神経性浮腫
 物理性じんま疹
  寒冷じんま疹
  温熱じんま疹
  コリン性じんま疹
  日光じんま疹
  水性じんま疹
 接触じんま疹


分類と治療
 食事性じんま疹
 薬剤性じんま疹
 環境因子によるじんま疹
 物理的じんま疹
  機械的じんま疹あるいは人工じんま疹
  温度影響によるじんま疹
   温熱じんま疹
    局所性温熱じんま疹
    汎発性温熱じんま疹
   寒冷じんま疹
   日光じんま疹あるいは光線じんま疹
   水性じんま疹
 コリン性じんま疹(汗のアレルギー)
 病巣感染性じんま疹
 心因性じんま疹
 その他

治療:アレルゲンの回避、抗ヒスタミン剤、化学物質遊離抑制薬(抗アレルギー薬)の投与。

SNMC(グリチルリチン)の静注。

血管性浮腫angioedema

びまん性の皮膚の硬結で、かゆみが少なく、真皮下層、皮下組織、粘膜下組織に生じた浮腫。数時間以内に消失。

遺伝的に補体第一成分阻害因子 C1 inhibitorが欠損している。

軽微な外傷、抜歯、手術、月経、局所の圧迫、ストレスで誘発。

好発部位は四肢、顔面、咽頭、気管、消化管。

治療:アンドロゲン製剤の経口投与。抗プラスミン製剤、新鮮凍結血漿、精製C1INHの投与。

薬物アレルギー

病型
1)皮膚:最も多い(80%)
蕁麻疹様発疹[I型]
紅斑、水泡疹、紫斑[III型]
固定薬疹、接触性皮膚炎[IV型]
光線過敏症

   (皮膚科的な分類:固定薬疹、播種性紅斑
    丘疹型皮疹、多型滲出性紅斑型発疹、中
    毒性表皮壊死症)

2)血小板減少性紫斑病、顆粒球減少症、再生不良性貧血
3)急性腎不全、間質性肺炎、血管炎
4)薬剤性肝障害(肝細胞障害型、胆汁欝滞型、混合型)

検査:lymphocyte stimulation test (LST)が診断の一助となる。

原因薬剤:抗生物質、鎮痛剤が多い。

一般症状:      
 発疹                   
 発熱                   
 頭痛                   
 肝障害 
 アナフィラキシー・ショック                 
治療:
 ステロイド、抗ヒスタミン剤、血漿交換療法

血清病

異種抗血清の注射により形成される免疫複合体 immune complex による III型アレルギーにより成立
血清投与後約1〜2週間後
発熱、関節痛、皮疹、リンパ節腫脹
4〜5日で消退
神経炎、血管炎、腎炎の合併もある。
治療:非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤

消化管アレルギー

・I型>>>III型またはIV型        
・食物摂取後数分から数時間        
・腹痛                  
・下痢                  
・粘液便                 
・吐き気、嘔吐              
・腹部膨満感               
・下血、吐血               
・除去試験、誘発試験、RAST、皮内反応

アトピー性皮膚炎Atopic dermatitis

喘息、アレルギー性鼻炎など”アトピー性疾患”の一つ。世界中で、人口の8-25%がアトピー性疾患に罹患している。先進国の都市部に多い。大部分の患者が5-8歳までに発病する。

アトピー性皮膚炎は皮膚の慢性炎症を引き起こす疾患である。

患者の85%は血清IgEが上昇しており、食物、吸入抗原、特にダニや動物の皮屑などに対する皮膚反応が陽性である。

アトピー性皮膚炎の患者の50%に喘息の家族歴がある。第11染色体にある母親の遺伝子によって、アトピーの素因が伝えられるという報告がある。→遺伝性がある。

Th2優位などの抗体産生亢進状態にある。

主要症状
・掻痒
・皮膚炎:成人では屈面、乳児では顔面と伸側
・慢性で再発性の皮膚炎
・皮膚あるいは呼吸器のアトピーの既往または家族歴

副症状
・アトピー顔貌:蒼白あるいは紅斑、脱色素斑、眼窩下の黒ずみ、眼窩下のしわ、口唇炎、再発性結膜炎、頚部前面のしわ
・アトピー性皮膚炎のトリガー:食物、感情因子、環境因子、羊毛/溶剤/汗などの皮膚の刺激物
・アトピー性皮膚炎の合併症:ウイルス/細菌の皮膚感染症が起きやすい、細胞性免疫の障害、即時型皮膚反応陽性、血清IgEの上昇、円錐角膜、前嚢下白内障
・その他:若年発症、乾燥皮膚、魚鱗癬、毛孔性角化症、手/足の皮膚炎、乳頭湿疹、白色皮膚描記症、毛嚢周囲の強調

*主要症状3つ以上+副症状3つ以上
Hanifin, JM, Rajka, G. Diagnostic features of atopic dermatitis. Acta Dermatol Venereol 1980; 92(suppl):44.

治療
・増悪因子の排除
・Hydrocortisone軟膏またはクリーム→軽度の場合
・Triamcinolone(0.1%)軟膏→より重度の場合
・急性増悪時:Prednisone 40-60mg/日3-4日→20-30mg/日3-4日
・抗ヒスタミン薬:掻痒や目の刺激症状に対して補助的に投与:diphenhydramine, hydroxyzine,

cyproheptadine,doxepinなど
・シクロスポリン、Tacrolimus、Azathioprine

物理アレルギー

温度じん麻疹(寒冷じん麻疹など)
日光じん麻疹
運動誘発喘息
食事性運動誘発アナフィラキシー

アレルギー疾患の治療

原則
●原因物質の除去、回避、減少

●特異的減感作療法
 少量の抗原を投与する。抗原量を漸増する。
  blocking antibody=IgG抗体を作ることによってアレルギー反応を起こらないようにす る。
●薬物療法(抗ヒスタミン剤、インタール、副腎皮質ホルモン)


減感作療法 Hyposensitization therapy=免疫療法Immunotherapy

  回避できない抗原の場合
  少量から漸増しながら注射する