消化器疾患:慢性肝炎、自己免疫性肝疾患、肝硬変、肝細胞癌、胆石症

慢性肝炎

肝障害(血清AST、ALTの上昇)が6ヶ月以上持続する。
肝生検でリンパ球浸潤、門脈域の線維性拡大、肝細胞壊死などを認める。
一部は肝硬変に進展し、肝細胞癌を発症する。

原因と分類:
B型肝炎ウイルスの持続感染→B型慢性肝炎
C型肝炎ウイルスの持続感染→C型慢性肝炎
自己免疫→自己免疫性肝炎

B型慢性肝炎

B型肝炎ウイルスの持続感染が成立している場合、一部は慢性肝炎を発症する。

治療:
インターフェロンと抗ウイルス薬

経口薬ラミブジン(Lamivudine)はHBVの増殖を強く抑制し、コンプライアンスも高い。B型慢性肝炎、B型劇症肝炎で有効性が報告されている。5年間以上の長期投与が行われているが、HBe抗原が陰性化しない場合でも、組織学的な完全が認められている。長期投与の場合、YMDDなどの変異株が出現する例があるが、その臨床的な意味については、結論が出ていない。また、ラミブジン耐性株に対して有効なアデフォビルAdefovirも使用可能となり、さらに、エンテカビルEntecavirも保険適用となった。治療法の選択は、個別に判断される。

C型慢性肝炎 chronic hepatitis C

●感染初期には診療を受けていない例が多く、自覚症状も乏しいので、軽度のAST, ALTの上昇により発見されるケースが多い。
●HCV Abが陽性であればHCVに感染している。さらに、アンプリコア法など核酸増幅法により血清HCV RNAが証明されれば、HCVの存在を証明できる。

HCVのウイルスマーカーについてはこちら参照

●慢性肝炎から肝硬変症肝細胞癌へと進行する例が多い。現在、日本における肝硬変肝細胞癌の70−80%はHCVが原因である。 

●治療:
PEG-インターフェロン(週1回投与)とリバビリンRibavirin(1日2回内服)の併用療法が標準治療である。48週投与が行われる。ウイルスのゲノタイプ、ウイルス量により有効性が異なるが、50%以上の著効(投与終了後6ヶ月以上HCV RNA陰性持続)が得られる。著効の場合、肝線維化が改善し、肝細胞癌の発生が抑制される。著効でなくても有効(投与中の肝機能改善、ウイルス消失)であれば、肝細胞癌の発生が抑制される。

リバビリンは溶血性貧血の副作用が約30%起こる。 インターフェロンは発熱、筋肉痛、血小板減少、白血球減少などの副作用が出現し、時には間質性肺炎など重篤な副作用が出現する場合があるので、治療中のモニタリングが重要である。

肝硬変でも著効が得られる。また、肝細胞癌治療後の投与で、再発が抑制される。ただし、これらの病態では血小板減少のため、インターフェロン投与ができないことが多い。



自己免疫性肝炎 autoimmune hepatitis (AIH)

中年以後の女性に好発する。
1)持続性または反復性のトランスアミナーゼの上昇。
2)γグロブリンまたはIgG 2.0g/dl以上。
3)LE細胞現象(→Lupoid hepatitis)、LE testまたは抗核抗体(ANA)陽性。抗平滑筋抗体陽性。
4)A型、B型、C型肝炎ウイルス感染の存在を示す血清マーカーがいずれも陰性
5)ステロイドが有効。
 +
a)発熱、関節痛、発疹などのsystemic manifestation
b)膠原病を含む自己免疫疾患の合併。
c)赤沈の亢進(30mm/h以上)またはCRP陽性。

肝組織所見:慢性活動性肝炎。時に、小葉改築傾向、亜小葉性壊死。
病理組織学的にはウイルス性慢性肝炎との鑑別は困難である。
日本人症例はHLA DR4陽性例が90%を占め、残りはDR2が陽性である。(欧米のAIHはDR3が陽性である)

発病時に黄疸を呈し、ALTが高値をとり急性肝炎を思わせる症例もある。
ほとんどの例が少量のステロイドの服用でコントロールできるが、免疫抑制剤であるアザチオプリンの投与が必要な例もある。

自己免疫性肝炎の診断基準(改訂scoring system)
(International autoimmune hepatitis group, 1999年)

表5                                 
      
項目/特徴 点数 脚注       
性 女性 +2

ALP : AST (あるいはALT)比
<1.5 +2 1
1.5-3.0 0
<3.0 -2
血清グロブリンあるいはIgG(正常上限値との比)
>2.0 +3
1.5-2.0 +2
1.0-1.5 +1
<1.0 0
ANA, SMAあるいはLKM-1
>1:80 +3 2
1:80 +2
1:40 +1
<1:40 0
AMA陽性 -4
肝炎ウイルスマーカー
陽性 -3 3
陰性 +3
服薬歴
陽性 -4 4
陰性 +1
平均飲酒量
<25g/日 +2
>60g/日 -2
肝組織所見
Interface肝炎 +3
リンパ球形質細胞優位な浸潤 +1
肝細胞ロゼット形成 +1
上記を全て欠く -5
胆管病変 -3 5
他の病変 -3 6
他の自己免疫疾患 +2 7
付加的項目 8
他の限定された自己抗体陽性 +2 9
HLA DR3あるいはDR4 +1 10
治療に対する反応  著効 +2 11
  再燃 +3

総合点数の評価
治療前  AIH確診 >15
AIH疑診 10-15
治療後 AIH確診 >17 12
AIH疑診 12-17
  
表6の説明を参照すること.ALP = alkaline phosphatase, AST = aspartate aminotransferase, ALT = alanine aminotransferase, ANA = antinuclear antibodies, SMA = smooth muscle antibodies, LKM-1 = type 1 liver-kidney microsomal antibodies

表6 表5の説明
1 ALP:AST(or ALT)比はこれらの測定値をそれぞれの正常上限値(unl)で除した値とする.例:(IU/l ALP÷unl ALP) ÷(IU/l AST÷unl AST)

2 抗体力価はげっ歯目動物組織片を用いた間接蛍光抗体法(ANAはあるいはHEp-2細胞)で測定する.小児では低力価のことが多く(特にLKM-1),小児の低力価陽性は最低+1とする.

3 A型,B型およびC型肝炎ウイルスマーカーを意味する(例:IgMHA抗体,HBs抗原,IgMHBc抗体,HCV抗体およびHCVRNA).これら肝炎ウイルスマーカーが陰性でも病因にウイルスが疑われれば,サイトメガロウイルス,EBウイルスなどの肝炎に関連したウイルスマーカーを測定する.

4 最近のあるいは経過中に服薬し,肝障害性が知られているあるいは疑われる薬剤の服薬歴.

5 胆管病変はPBCやPSCに典型的な胆管病変(すなわち,十分な生検肝組織に認められる肉芽腫性胆管炎,胆管減少を伴う高度な胆管周囲線維化)および銅/銅結合蛋白の集合を伴う門脈周囲肝実質の胆管反応(いわゆる細胆管炎を伴う門脈周囲の胆管増生).

6 他の病因を示唆する重要な所見およびその共存.

7 患者あるいは1親等での他の自己免疫疾患

8 他の限定された自己抗体およびHLA DR3あるいはDR4(測定可能な場合のみ算定)の点数の加算は血清ANA, SMAおよびLKM-1が陰性の患者にのみ割り当てられる.

9 他の限定された自己抗体は測定方法およびAIHとの関連に関する成績が報告されたものである.pANCA抗体,LC1抗体,SLA抗体,ASGPR抗体,LP抗体,スルファチド抗体などが含まれる.

10 HLA DR3とDR4は主に北ヨーロッパ白色人種および日本人に関連する.他のHLAクラスII抗原でもその人種においてAIHとの関連を示す証拠が報告されれば1点を割り当ててよい.

11 治療効果判定はどの時期に評価してもよい.治療効果の点数は初診時の算定に加算する.

12 治療効果の判定は表7に示す.

表7 治療効果判定の定義

治療効果 定義

著効
次の一方あるいは両者:症状が著明に改善し,1年以内に血清AST, ALT,ビリルビン,免疫グロブリン値が完全正常化し維持療法で6ヶ月以上正常が持続,あるいはこの間の生検肝組織所見の炎症がごくわずかあるいは次の一方あるいは両者:症状が著明に改善し,全ての肝機能検査が治療開始1ヶ月で少なくとも50%改善し,6ヶ月以内の漸減療法中に血清ASTあるいはALT値が正常上限値の2倍未満を持続する,あるいは1年以内の生検肝組織所見の炎症がごくわずか.

再燃
次の一方あるいは両者:上記で定めた著効の後,症状の再出現の有無に関係せず,血清ASTあるいはALT値が正常上限値の2倍以上に上昇,あるいは生検肝組織所見が活動性病変を示すあるいは上記で定めた著効の後,血清ASTあるいはALT値のいずれかの上昇を伴い,免疫抑制薬の増量あるいは再投与を必要とするほど高度な自覚症状の再出現.

(J Hepatol 1999 Nov;31(5):929-38) )

原発性胆汁性肝硬変 Primary biliary cirrhosis (PBC)

●中年以降の女性に好発。皮膚掻痒感が初発症状であることが多い。
●組織学的に小葉間胆管の破壊、その周囲のリンパ球の浸潤=chronic non-suppurative destructive cholangitis: CNSDCが特徴的。進行する例では胆管が次第に消失し肝硬変へと進行し、黄疸が出現する。
●胆道系酵素の上昇、抗ミトコンドリア抗体 (anti-mitochondrial antibody, AMA) 陽性である。AMAはPyruvate Dehydrogenase (PDH)のE2 componentに対する抗体が主成分である。
●無症候性PBCは予後良好。有症状PBCは予後不良。黄疸が末期に出現。
●有効な治療法はないが、UDCAの投与によりALPの低下や、AMAのタイターの低下が認められる。しかしながら長期予後の改善が証明された治療法はなく、肝移植の適応となる。

原発性硬化性胆管炎 Primary Sclerosing Cholangitis (PSC)

原因不明であるが、自己免疫が想定されている。
潰瘍性大腸炎に合併することがある。
好発年齢には20台と70台の2つのピークがある。
胆管、肝管の狭窄が引き起こされ、黄疸、胆道系酵素上昇をきたし、肝硬変へと進展する。
胆管癌のリスクが高い。
肝組織では、胆管周囲のオニオンスキン病変が特徴的である。
胆管造影(ERCP, MRCなど)で肝管の消失(枯れ木様)、数珠状の狭窄が認められる。
有効な治療法はなく、肝移植が最終的に選択されることがある。

肝硬変症:重症度判定

肝硬変症 liver cirrhosis (LC)
形態:1)びまん性の結節形成、2)小葉構造の喪失;門脈域相互、中心静脈との間に線維性隔壁、それらが再生結節を取り囲む。
原因:ウイルス性慢性肝炎からの移行が大半である。
症状(治療):手掌紅斑クモ状血管種、Fetor ex oreを認める。進行すると黄疸腹水が出現する。門脈圧亢進症のため食道静脈瘤(さらに胃静脈瘤)が形成され吐血することがある。静脈瘤に対して内視鏡的硬化療法、内視鏡的結さつ術が行われるが、これにより吐血の頻度が大きく低下した。

肝性脳症に対してはbranched chain amino acids (BCAA)の投与、蛋白摂取制限、ラクツロースの投与により血漿アンモニア値を下げる治療が行われる。 BCAA経口投与も行われる。

検査結果:
●GOT, GPTは軽度上昇、GOT>GPT。
●Hypoalbuminemia, hypergammaglobulinemia。
●ICG (indocyanine green)排泄試験:R15 15〜40%。
●腹部エコー(肝細胞癌の発生が高率なので[50%以上]3、4カ月ごとにフォローアップする必要がある)、CTスキャン。















重症度の指標として広く用いられているのがChildの分類である。外科手術が必要な例ではChildの分類による評価が必要であり、B, Cは手術時の死亡率が高いので、できるだけ待機的手術にし、補正できる異常は改善してから手術に望むようにする。


Child-Turcotteの分類 A B C
ビリルビン(mg/dl) 2.0以下 2.0〜3.0 3.0以上
アルブミン(g/dl) 3.5以上 3.0〜3.5 3.0以下
アルブミン(g/dl) 3.5以上 3.0〜3.5 3.0以下
腹水 なし     治療奏功 治療抵抗
意識 正常   軽度異常   肝性脳症
栄養状態 良好   ほぼ良好   不良
Child-Pughの分類 123
ビリルビン(mg/dl) ≦2.0 2.0〜3.0 >3.0
アルブミン(g/dl) >3.5 2.8〜3.5 <2.8
腹水 なし     軽度 中等度
脳症 なし   1−2度   3−4度
プロトロンビン時間延長 1−3秒  4−6秒   >6秒
スコア5−6:Grade A よく代償されている
スコア7−9:Grade B 機能低下状態
スコア10−15:Grade C 非代償性肝硬変


肝細胞癌の診断と治療

肝細胞癌 hepatocellular carcinoma (HCC)
●肝細胞から発生する肝の原発性悪性腫瘍。
●ほとんどが肝硬変症から発生する。LCから発生する場合にはmulticentricに発生することが多い。一部慢性肝炎からも発生するが、この場合にはsingle nodularな発生が多い。C型慢性肝炎の場合には肝生検組織像でirregular regeneration (不規則再生)の程度の高いものはLCと同程度の率でHCCの発生が認められる。
●早期の肝細胞癌は直径1.0 cm程度でも、超音波検査で検出可能である。
Early HCC (hepatocellular carcinoma): dysplastic nodule (adenomatous hyperplasia)→border-line lesion→well differentiated HCC→replacement by poorly differentiated HCC: usually associated with fatty change.という一連の過程が想定されているがまだ不明である。
また、Atypical Adenomatous HyperplasiaからHCCへ移行することがあることも知られている。





肝細胞癌の治療
治療
3cm以下3個以内で経皮経肝的にアプローチできる場所:
PEI (percutaneous ethanol injection) treatment
●マイクロ波凝固療法
●Radio Frequency (RF) Ablationラジオ波焼灼療法

肝左葉または右葉に限局:
●Surgical resection

いずれも不可能な場合:
TAE (trans-catheter arterial embolization)
TAI (trans-catheter arterial injection): MMC, Farumorubicin, Adriamycin
*ただし、TAEではHCC以外の肝にダメージを与えるので肝硬変の進行を早め、腫瘍は縮小しても長期予後はかわらないという報告が6つ欧米から出されている。症例を選択すれば、生存の延長が可能なことが報告されている。

欧米では:
●Liver transplantation

薬剤性肝障害 Drug-induced hepatitis

Allergicなものとtoxicなものに分けられるが、大半が前者である。
診断基準 (旧)
1)薬剤の服用開始後週後に肝機能障害の出現を認める。
2)初発症状として発熱発疹、皮膚掻痒、黄疸を認める(2項目以上を陽性とする)。
3)末梢血液像に好酸球増加(6%以上)、または白血球増加を認める。
4)薬剤感受性試験- リンパ球培養試験(LST)、皮膚試験- が陽性である。
5)偶然の再投与により、肝障害の発現を認める。
確診:1)、4)または1)、5)を満たす。
疑診:1)、2)または1)、3)を満たす。

起因薬剤には抗生物質と解熱・鎮痛・消炎薬が多い。

1)肝細胞障害
2)胆汁うっ滞
3)混合
に分類される

<薬剤性肝障害診断基準 DDW-Japan 2004>

1.肝障害を診た場合は薬剤性肝障害の可能性を念頭に置き、民間薬や健康食品を含めたあらゆる薬物服用歴を問診する。
2.この診断基準は、あくまで肝臓専門医以外の利用を目的としたもので、個々の症例での判断には、肝臓専門医の判断が優先する。
3.この診断基準で扱う薬剤性肝障害は肝細胞障害型、胆汁うっ滞型もしくは混合型の肝障害でALTが正常上限の2倍、もしくはALPが正常上限を超える症例と定義する。

1)ALTおよびALP値から次のタイプ分類を行い、これに基づきスコアリングする。

 a.肝細胞障害型 ALT>2N+ALP≦NまたはALT比/ALP比≧5
 b.胆汁うっ滞型 ALT>2N+ALP>2N またはALT比/ALP比≦2
 c.混合型 ALT>2N+ALP>N かつ2<ALT比/ALP比<5
                            (N:正常値上限)
4.重症例では早急に専門医に相談すること。
5.自己免疫性肝炎との鑑別が困難な場合(抗核抗体陽性の場合など)は、肝生検所見や副腎皮質ステロイド薬への反応性から肝臓専門医が鑑別すべきである。
6.併用薬がある場合は、その中で最も疑わしい薬を選んでスコアリング(下記)を行う。
  薬剤性肝障害の診断を行った後、併用薬の中でどれが疑わしいかは、発症までの期間、経緯、過去の肝障害の報告、DLSTの項目から推定する
7.薬物以外の原因で原因の有無で、経過からウイルス肝炎が疑わしい場合は、診断鑑別のためIgM HBc抗体、HCVRNA定性の測定が必須

<スコアリング> 5点以上では可能性が高い。

1.発症までの期間 5〜90日  +2
  <5日 >90日         +1
2.経過 
  中止後のALTの減少率によって +1〜+3
3.危険因子(飲酒歴、妊娠) あり  +1
          〃    なし  0   
4.薬物以外の原因の有無   −3〜+2
5.過去の肝障害の報告あり    +1
6.好酸球増多(6%以上)    +1
7.DLST陽性           +2
   〃偽陽性          +1

胆石症

疫学・症状
●従来から、fat, fourty, female に多い疾患とされてきた。つまり、肥満の四十台の、女性に多い。男女比1:2で女性に多い。女性の場合妊娠中に胆石を形成することがある。
●いわゆるsilenct stoneが多く一生症状を呈さない例の方がい。日本人の胆石保有率は7〜8%とされているが、剖検例の約15%に胆石が認められている。胆嚢内のものが90%、残りは胆管内にある。年齢と共に、有病率は上昇する。

沖縄の研究:
1984年超音波検査による診断
年齢 女性 男性
0−19歳 0 1.0 (%)
20-29 3.0 1.0
30-39 3.5 2.5
40-49 3.0 2.0
50-59 4.0 1.5
60-69 9.0 4.5
70歳以上 9.5 15.0

人種に有病率にはがある。

●胆石のリスクファクター
年齢、女性、妊娠、肥満、急激な体重減少(非常に低いカロリー、肥満に対する手術後)、肝硬変、溶血性貧血、中性脂肪高値、投薬(エストロゲン、経口避妊薬、Clofibrate、Octreotide、など)、回腸末端部切除後、胆嚢での胆汁の滞留(糖尿病、完全非経口栄養、迷走神経遮断術後、脊髄損傷後、運動不足

脂肪に富んだ食事、飲酒、あるいは過労、ストレスの後数時間で、突然激しい刺すような右季肋部痛、心窩部痛が起こる。右肩、背、胸部に放散することが多い。右季肋部に圧痛を認め、Murphy徴候が認められる。疝痛は胆石が胆嚢頚部に嵌入した時に起きる。胆石が胆嚢内に戻るか、十二指腸へ排出されると腹痛はおさまる。胆石発作と呼ばれる。発熱、黄疸、障害、白血球増加を伴うこともある。発作時以外には症状に乏しい

胆石の成分による分類

分類
●胆石の分類
 1.コレステロール胆石(約70%を占める)
  a)純コレステロール石
  b)混成石
  c)混合石
 2.色素胆石(約20%を占める)
  a)黒色石
  b)ビリルビンカルシウム石
 3.まれな胆石
  a)炭酸カルシウム石
  b)脂肪酸カルシウム石
  c)ほかの混成石
  d)その他の胆石
●胆嚢胆石、総胆管胆石、肝内胆石









発作時の検査・治療

発作時の検査・治療
●腹部超音波検査、血液検査(白血球数、機能、CRPなど)を行う。

●鎮痙薬(ブスコパン)の注射、禁食、輸液、胆嚢炎を起こしている場合(発熱、白血球増加、赤沈の亢進、CRP上昇)は抗生物質の投与。





間欠期の治療

●無症状の胆石は経過観察。胆嚢癌との関係はない。無症状の胆石の内、約20%は腹痛発作を起こすことになる。
●有症状の胆石は 脂肪アルコールの制限

1.胆汁酸溶解療法:UDCA ursodeoxycholic acidまたはCDCA chenodeoxycholic acid:非石灰化コレステロール結石で1.5 cm以下。半年から2年服用。
2.衝撃波破砕療法 ESWL extracorporeal shock wave lithotripsy:コレステロール結石で3 cm以下3個以下。
1も併用。

3.腹腔鏡下胆嚢摘出術 laparoscopic cholecystectomy:現在の主流の外科治療法。
4.外科的胆嚢摘出術

(胆嚢摘出後症候群:胆嚢摘出術後におこるさまざまな不定の消化器症状をいう。遺残結石によるものが多い。)

閉塞性黄疸と胆道系の腫瘍

肝外胆道系腫瘍
●肝外胆管腫瘍
  胆管癌:総胆管>胆嚢管合流部に多い。合流部以下にできる場合には胆嚢が腫大し黄疸になる(Courvoisier徴候)。黄疸、肝腫大、灰色便、疼痛、発熱などの症状が現れる。
●十二指腸乳頭部腫瘍
  分化度の高い腺癌が多い。膵頭部癌、十二指腸癌との鑑別が困難な例も多い。進行性の黄疸(胆汁うっ滞)が起きる。

診断・治療
●診断
 超音波検査
 CTスキャン
 胆道造影(DIC: drip infusion cholecystography, ERCP: endoscopic retrograde cholangio-pancreatography、PTC: percutaneous transhepatic cholecystography)
 腹部血管造影

●治療
 外科切除
 手術不能例にはPTCDで黄疸の軽減を図る。