Evidence-based Nursingの手法

チーム医療における看護

医療従事者Health care worker:医師、看護師、薬剤師、検査技師、レントゲン技師、理学療法士、他、さまざまな職種が協力し合って、医療ケアを提供する。

患者と向き合って、看護ケアを提供する:
・患者の抱えている問題は何か把握する。
・想定される疾患、病態を明らかにするための、診察・検査を行う。
・その過程で患者、医師、検査技師等をサポートする。
・有効な治療を提供する。
・その実行者または補助者となる:医師の医療のサポート、投薬/服薬の実行、処置の実行、患者の生活のサポート、共感、精神的支援、等
・医療記録:看護記録の作成


Treatment: Example
治癒的Curative: 抗菌薬治療antibiotic treatment, 腫瘍の切除tumor removing
予防的Preventive: リスクファクターの除去あるいは低減eliminating or removing a risk factor
緩和的Palliative: 疼痛の治療treating pain
支援的Supportive: 精神的支援psychological assistance


クリニカルクエスチョン

看護ケアを行う中でわいてくる臨床上の疑問、臨床上解決の必要な問題。
患者から発せられる疑問はペイシェントクエスチョン。

クリニカルクエスチョンの定式化:

PICOあるいはPICOD
PECOあるいはPECOD

Patient 疾患、病態
Intervention 介入、治療
Control (Comparison) 対照
Outcome アウトカム(転帰)

Exposure 要因曝露、危険因子曝露

Design 研究デザインStudy design



文献検索のための 検索式 の作成

例: 「(P)喘息患者で(I)吸入ステロイド薬を用いると(C)用いない場合と比べ(O)入院の頻度が減少するか。」(D)ランダム化比較試験


PubMed用の検索式

asthma AND inhaled corticosteroid AND (hospitalization OR admission) AND (randomized controlled trial[pt] OR multicenter study[pt] OR meta-analysis[pt])

Evidence-based Medicine (EBM)とは

EBMの定義:
「最新の研究知見をシステマティックに見つけ、吟味し、用いることに基づいて臨床判断をおこなうプロセス」
科学的根拠に基づく医療、すなわち医療の実践の体系であって、医学という学問の1つの領域ではない。

臨床疫学、医学統計学、臨床倫理などに基づく。

EBM実践のプロセス:
1. 必要な情報を解答可能な質問に変換する→クリニカルクエスチョン
2. 質問に答えるための最善のエビデンスを探索する→文献検索
3. エビデンスの妥当性と重要性の批判的吟味を行なう
4. 批判的吟味の結果を臨床の経験・知識と患者の価値観と統合して医療を実行する
5. 実効を評価する

臨床判断に関与する要素


かならずしも科学的根拠=エビデンスに基づいて最良と思われる医療を実施できるわけではない。
エビデンス、患者あるいは医師の要素、制約の3つによって臨床判断がなされる。

Critical Appraisal

文献検索で得られた文献リストからタイトル、要旨を読んで、目的にあった文献を選定する=一次選定。

必要な論文は全文を取り寄せる。図書館でコピーする、オンラインジャーナルをダウンロードする(PDF)(有料、一部は無料)、国際医学情報センターなどに依頼する(有料)。

目的にあった文献を選定する=二次選定

採択されたそれぞれの論文をCritical Appraisal 批判的吟味する。

たとえば、ランダム化比較試験の場合、以下の項目をチェックする:
・研究デザイン
・適格例の基準
・サンプルサイズ
・ランダム割付の方法
・盲験化の有無、コンシールメントの有無
・治療企図解析(Intention-to-treat analysis)の有無
・95%信頼区間

さまざまなチェックリストが考案されている(たとえば、こちら)。

すなわち、論文の著者らの主張を鵜呑みにするのではなく、その妥当性Validityを評価する必要がある!

その検査をすると、その治療をすると得するか?

診断のためにその検査を実施すると、あるいはその治療をすると、患者さんはするか=Benefit ⇔ するか=Harms, Burdens, Costs =Downsides

症状が軽快する ⇔ 副作用が出る
生存がある期間延長する(平均余命延長Average Duration of Life Gained, ADLG) ⇔ 副作用が出る(抗癌薬の例:嘔気、嘔吐、脱毛、白血球減少、感染症、下痢、間質性肺炎、その他、最悪の場合副作用で死亡)

どのようなアウトカムに対してどれくらいの効果があるのか(得する確率×重要性)?

それは以下のマイナス面(損する確率×重要性)に見合うか?

どれくらいの重篤度の副作用がどれくらいの率で起きるのか?

どれくらいの費用がかかるのか?
通院回数、入院期間などの負担はどれくらいか?

効果が認められる率とマイナス面が起きる率は事前に分かるが、個々の患者でそれ当てはまるかどうかは事前には分からない→
確率論的な考え方が必要になる。

臨床研究デザイン

臨床研究の主な研究デザインは4つ:



図の中でa, b, c, dは人数を表す。各自、これらを表にしてみよう。

例:

ランダム化比較試験アウトカムありアウトカムなし
介入ありab
介入なしcd

この例の場合、どのような値であれば、介入の効果があるといえるか考えてみよう。また、介入の効果を定量的に表すためには、どのような効果指標を用いればよいであろうか?

たとえば、
リスク比 Risk Ratio (RR)(Relative Risk)
相対リスク減少率 Relative Risk Reduction (RRR)
絶対リスク減少 Absolute Risk Reduction (ARR)(Rate Difference)
治療必要数 Number Needed to Treat (NTT)

オッズ比 Odds Ratio (OR)

感度 Sensitivity
特異度 Specificity
陽性尤度比 Positive Likelihood Ratio (LR+)
陰性尤度比 Negative Likelihood Ratio (LR-)
受信者動作特性解析l(Receiver Operating Characteristic Analysis、ROC解析)における曲線下面積(Area Under the Curve, AUC)

また、ベースラインリスク(Baseline Risk)とは?

メタアナリシスとは

1つの研究の解析対象=患者さんや健常ボランティアなど、は母集団の一部=サンプル(標本)、にすぎないため、得られた効果指標は真の値=母集団のパラメータ(平均値などのこと)、の推定値Estimateでしかない。

たとえば、20歳の日本人女性の体重の平均値を知る目的で、10人の20歳日本人女性の体重を測定して、平均値を算出したとする。別の10人を調べた場合、平均値は少しずつ異なるはずである。

高血圧の患者さん20名を2群に分けて、治療薬Aとプラセボをそれぞれ投与して(=介入)、1週間後の血圧(=アウトカム)を測定し、10人ずつの平均値を求めたとする。治療薬Aを投与した群の平均値の方が小さかった場合、有効性があると判断できるかもしれない。

もし、高血圧の別の患者さん40名で同じ様に血圧に対する効果を測定した場合、違う値が得られるはずであり、血圧降下の程度も異なるはずである。それは、サンプリングの偶然によるばらつき、たとえば、血圧の低めの人が偶然多く集まったりするようなこと、によって起き、それは統計学的な法則にしたがって、ある分布に従うものの中の、1つの値にすぎない。さらに、血圧に影響を与えうる、(食塩摂取量など)、他の因子が研究ごとに異なってくることもありうる。これらは共変量Covariateと呼ばれる。

このように、複数の研究が行われた場合、それぞれ異なる効果指標の値が得られる。それらをまとめて、統合値を統計学的な手法で、算出することができる。これをメタアナリシスという。統合値とばらつきの指標である95%信頼区間の値が求められる。

固定効果モデル、ランダム効果モデル、ベイズ統計学を用いる方法などがある。

ランダム化比較試験の重要性

危険因子や病因が解明された時点で、患者さんは何らかのベネフィット(便益)を受けることができるか?

たとえば、生存が延長する(癌の場合)、症状がおさまる(急性あるいは慢性疾患の場合)、QOL(Quality of life, health-related quality of life)が改善する(慢性疾患の場合)、生存率が向上する(急性の死亡率の高い疾患の場合)、感染が予防できる、再発が抑制される、などのアウトカムはベネフィットに直接つながる。

これらを妥当性をもって、直接的に証明できる研究デザインはランダム化比較試験である。

*危険因子や病因を制御することによって、アウトカムが改善すること*を証明できてはじめて、患者ががベネフィットを受けられる。

→各自その他の例を考えてみること。(たとえば、HIVなど)。

エビデンスレベル

レベルT:システマティクレビュー/メタアナリシス
レベルU:1つ以上のランダム化比較試験による
レベルV:非ランダム化比較試験による
レベルWa:分析疫学的研究: コーホート研究
レベルIVb:分析疫学的研究: 症例対照研究、横断研究
レベルX:記述研究(症例報告やケースシリーズ)
レベルY:患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見


統計学的差

介入の有効性の証明:

・実薬投与群=実験群とプラセボ投与群=対照群のアウトカム陽性率を比較する。
a/(a + b)とc/(c + d)を統計学的に有意差があるかどうかを解析する。

・実薬A投与群と標準薬投与群を比較する→非劣性試験、同等性試験、優位性試験、(等性試験)

帰無仮説 Null Hypothesis
否定したい仮説
棄却したい仮説
想定される効果と逆の効果





比較する2群間の差が大きいほどサンプルサイズは小さくて済む。差が小さくてもサンプルサイズを大きくすれば=多数の対象者を調べれば、有意差を証明できる。