第22回川崎リバーカンファレンス
(1998.5.23[土曜日]14:00から)
臨床医のための自己免疫性肝疾患を中心にした肝臓勉強会
第22回川崎リバーカンファレンス
 

日:平成10年5月23日(土)

時:午後2:00〜8:00 (特別講演は午後5時からです)

所:帝京大学溝口病院・二子研究棟7F講義室 Tel.044-844-3333

主催:シェリング・プラウ株式会社
 
Final Announcement

1) 症例検討

平成10年5月7日現在でエントリーされた症例を御紹介いたします。

宿題報告1:イOOOM、20歳男性、昭和大学第二内科(馬場俊之先生)
 第20回の当カンファに呈示した、中毒性表皮壊死症(TEN)+胆管消失症候群です 先天性の疾患(Alagilleなど)を否定するため、経過を追って肝生検しろと宿題がで ました。
約1年が経過し、再び肝生検を実施しました。消えた胆管は再生したでしょうか?
病理検体番号:H9-01320,  H10-00654

選抜積み残し症例 1:KS、25歳女性、都立墨東病院 (忠願寺義通先生)  
 診断:高EBV抗体価およびDICを合併したAIH:病態解釈困難例
 問題点:EBVVCAIgG抗体が10240倍と高抗体価を持続したことの臨床的意義は? PSLおよびAZT漸減中に発熱、血小板減少、DIC、肝機能の急性増悪を呈した原因は? 出産希望の若妻ですので、今後の注意、治療および管理をアドバイスして下さい。
病理:前回のスライド持参

選り抜き積み残し症例 2:◯藤◯代、43歳女性、横浜市立病院 (田中克明先生)
 診断:Turner症候群、糖尿病、肝腫瘍
 問題点:肝炎ウイルス感染を認めないTurner症候群の肝障害。GOT 134, GPT 277, ALP 1372, γ-GTP 516, BS 485です。胆道系酵素の上昇を伴う肝障害の原因は? 肝障害を含めた今後の内科的治療はどうしたらいいのでしょうか?
病理:前回のスライド持参、内田先生解説

新規症例1:宮○百○、15歳女性、都南総合病院小児科 (波多野道弘先生)
 診断:若年性慢性関節リウマチに合併した原因不明の小児肝障害
 問題点:1997年7月に手指の関節炎および肝機能異常で発症しました。プレドニン およびサイクロスポリンの投与を行っていますが、治療抵抗性です。血球貪食症候群 の合併も認められています。ANA陰性、LE test陰性です。肝障害の原因はAIHでしょ うか?
本例の診断を総合内科的に確定していただき、今後の治療方針をきめて下さい。
病理検体番号:10-773

新規症例2:80歳男性、東京逓信病院 (松浦 広先生、橋本直明先生)
 診断:PSC+補体C4欠損症+Hemochromatosis?
 問題点:胆道系酵素優位の上昇を認める肝障害。RECPおよび生検肝組織所見はPS Cに診断的でした。PSCの他に、肝細胞の著しい鉄沈着およびC4欠損症の合併が認 められました。
Genome Data Baseによると第6染色体短腕(6p21.3)は、Hemochromatosis、C4欠 損症、Stickler syndrome、OSMED syndrome、Congenital adrenal hyperplasia、Dea fness、Dyslexia、Renal glucosuriaなどの疾患の原因遺伝子だそうです。補体C4 欠損症はHemochromatosis、PSCあるいは何らかの肝障害の合併と関連するのでし ょうか?
病理検体番号:

新規症例3:SK、59歳男性、済生会横浜市南部病院 (永井一毅先生)
 診断:原因不明の総胆管の索状狭窄、腹膜後腔線維化症
 問題点:胆管炎で初発、種々の検査で上記と診断。IgGがなぜか3490と高値です。 胆管狭窄および腹膜後腔線維化の原因は何でしょうか? 自己免疫疾患の関与はある のでしょうか?PSCや胆管細胞癌は否定されるのでしょうか?
病理検体番号:

新規症例4:TY、54歳男性、自衛隊中央病院 (三谷先生)
 診断:HCV陽性肝硬変、肝細胞癌、後腹膜腫瘍、右上縦隔腫瘍
 問題点:肝細胞癌に対してPEIT治療中に、後腹膜および右上縦隔に腫瘍が出現しま した。後腹膜腫瘍は針生検で悪性リンパ腫と診断されましたが、剖検では未分化型肝 細胞癌と診断されました。肝細胞癌が、後腹膜や右上縦隔に転移することがあるので しょうか?針生検と剖検診断の相違がなぜ生じたのか?原発巣と転移巣の組織所見を 比較してみましょう。
病理:箱崎先生がスライド作ります

新規症例 5:ハOOOK、歳男性、昭和大学第二内科 (草柳 聡先生)
 診断:発症時にはIgG正常、ANA陰性、ASMA陰性であった自己免疫性肝炎
 問題点:黄疸を伴って発症した時は、ウイルス性急性肝炎に合致する検査成績でし た。しかし、TTVを含む各種肝炎ウイルスマーカーは陰性でした。数ヶ月後に、IgG高 値および自己抗体陽性となり、AIHらしい検査成績がそろいました。IgG高値や自己抗 体の出現は、発症の超初期には認められず、発症後に認められる現象なのでしょうか?
病理検体番号:H9-3427, H9-7782

新規症例 6:ヨOOTオ、歳男性、昭和大学第二内科 (草柳 聡先生)
 診断:特異な組織所見を呈した肝腫瘤性病変
 問題点:肝機能正常で、肝炎ウイルス感染を認めない症例に肝腫瘤が発見されまし た。生検ではWD-HCC、非腫瘍部はFLでした。画像検査の血管支配は肝細胞癌に否定的。 切除標本では、見たことのない進展形式が認められました。こんな進展があっても いいのでしょうか?
病理検体番号:H10-00653(針生検)、H10-01466(切除標本)

新規症例 7:YT、54歳女性、 神奈川歯科大学内科(常松 令先生)
 診断:肝発癌を認めたAIH
 問題点:HBsAg negative, HCVAb negative、1979年に肝生検を実施しAIHを診断、 コルチコステロイドおよび6MPによる治療を開始。肝硬変に進展はしていせんが、 1996年10月に肝発癌を認め、肝切除を行いました。はたして、肝炎ウイルス感染を伴 わないAIHからの肝発癌でも、肝細胞癌の背景肝に不規則再生が認められるでしょうか?
病理検体番号:8845、51012(北里研究所病院提供)

新規症例 8:イOOOOMO、58歳女性、 昭和大学第二内科
 診断:PSC?PBC?
 問題点:AMA陰性、ANA陰性、ASMA陰性、胆道系酵素高値の肝障害。MRCPでは胆管の 異常が認められず、PBCが示唆されました。生検では2箇所の胆管であやしい胆管周 囲性の線維化が認められました。PBCでしょうか?PSCでしょうか?
病理検体番号:H10-01320

新規症例 9:コOOSOO、65歳男性、 昭和大学第二内科
 診断:舌癌、肝癌、大腸癌、アルコール性肝硬変
 問題点:95年舌癌(扁平上皮癌)にて手術。98年2月肝に30mm大の結節性病変を認 めました。針生検では間質の線維化が著明で、結節型胆管細胞癌と診断しました。そ の後、偶然に大腸癌の合併が発見されました。肝の結節性病変が、肝癌か大腸癌肝転 移か決めて下さい。
病理検体番号:H10-1854(肝), H10-2202(大腸)

新規症例 10:サOOOトOOO、54歳男性、 昭和大学第二内科
 診断:HCC or 肝細胞の萎縮?
 問題点:LCC、97年7月に20mm大のMD-HCCを合併し、TAE+PEITで治療しました。98年 1月、CT, MR早期相で境界不明瞭な造影効果を有する病変が出現しHCC再発が疑われ ました。血管撮影とCTを組み合わせた検査では造影領域には、広汎なAP-shuntおよび 肝梗塞が認められHCCの存在は不明でした。CT下生検では、EWD-HCCの可能性および肝 梗塞に関連した血流障害による肝細胞の萎縮の可能性がありました。どちらでしょう か?鑑定して下さい。
病理検体番号:H9-04946, H10-1668

予備症例 1:ア◯サト◯、45歳男性、(川崎中央病院→荏原→昭和大学)
 診断:多発性HCCに肝移植の適応はあるか?
 問題点:LC-C, multiple HCC。T-Bil 30mg/dlの末期肝不全となり、1995年6月29日 に米国Stanford大学に依頼して肝移植を行いました。移植後約3年経過し、無再発で 完全に社会復帰しています。Stanford大学の摘出肝が入手できましたので組織学的検 討をお願いします。
病理検体番号:移植前(1)84-0220, 移植前(2)85-1475, 摘出肝(17653), 移植後(97.5.22)

予備症例 2:アOOOMコ、63歳女性、昭和大学第2内科 
 診断:IFNによる薬剤性肝障害?
 問題点:腎癌手術後にIFNα-2bを投与したら4日目に肝障害が出現し、T-Bil 9.0mg /dl, GOT 802IU/l, GPT 472IU/l, ALP 3595IU/l, γ-GTP 446IU/lとなりました。CT, MRI, ERCPで胆道系に異常は認められません。IFNによる薬剤性肝障害でいいのでしょ うか?
ちなみにDLSTはnegativeでした。
病理検体番号:H9-6705(H9,11/7), ID 97184861

 
2) 特別講演1:新春肝臓“K1グランプリ後半戦”
           ”K1 virus Grand-Prix in Mizonokuchi, the latter stage”
東芝病院臨床研究室   三代俊治 先生
講演題名:非A非B非C型肝炎における、GBV-C/HGV, TTV, 内田のサイレントBの関与? -残ったパイは小さくなったが-

追加発言1:Taqman PCRの成績(日大病理 内田俊和先生) 

3) 特別講演2:
順天堂大学第二病理   藤井博昭 先生
講演題名:マイクロディセクションおよびLOH(Loss of Heterozygosity)解析によ るヒト腫瘍の発生進展に関する研究 -乳癌を中心にして-

混合型肝細胞癌の成績の紹介もお願いします!

3) 特別講演3:
九州大学医学部第一内科 石橋大海 先生
講演題名:内田先生にもの申す!「リファンピシンによる肝障害」

 前々回の川崎リバーカンファレンスで、リファンピシンの薬剤性肝障害が問題にな っていました。内田先生は、肝臓病ことはじめ(文光堂)の90頁を開いて、リファン ピシンによる肝障害は胆汁うっ滞であると強調しておられことを皆様よく御記憶のこ とと存じます。会場にいた従順な羊の東京人は、誰も反論しませんでしたが、薩摩隼 人の九州人は黙っていません!。リファンピシンは、胆汁うっ滞型のみでなく、単独 では肝炎タイプ、イソニアジドとの併用では劇症肝炎を惹起することを、科学的デー ターを添えてお話ししていただきます。(文責:幹事)

 

“残ったパイ”に御興味のある方は以下の総説を読んでおいて下さい。三代俊治、太田裕彦:日本消化器病学会雑誌 95: 207-213, 1998.

“藤井先生”に御興味のある方は以下の論文を読んでおいて下さい。

Fujii H et al: Genetic progression and heterogeneity in intraductal papillary-mucinous neoplasms of the pancreas. Am J Pathol 151: 1447-1454, 1997.
Fujii H et al: Genetic progression, histological grade, and allelic loss inductal carcinoma in situ of the breast. Cancer Res 56: 5260-5265, 1996.
Fujii H et al: Genetic divergence in the clonal evolution of breast cancer.Cancer Res 56: 1496-1497, 1996.
Fujii H et al: Detection of frequent allelic loss of 6q23-q25.2 in microdissected human breast cancer tissues. Genes Chromosom Cancer 16: 35-39, 1996.

お知らせ

1)症例御呈示の先生方へ:原則としてスライドでプレゼンテーションして下さい。
2)発表で使用したスライドはHepatology on the Web (http://www.kdcnet.ac.jp/hepatology/)でInternet上に公開させていただきます。ご都合が悪い場合は柴田もしくは森實まで御申し出下さい。

3)会が終了しましたら、会場隣室で懇親会を開きます。全員御出席して下さい。

お誘いあわせのうえ多数の先生方および検査技師の方のご来場をお待ち申しあげてお
ります。
 

幹事:〒142 東京都品川区旗の台1-5-8 昭和大学第2内科 柴田 実
    TEL 03-3784-8535 (医局直通)
    FAX 03-3784-7553 (医局直通)
    E-mail: sibatami@ja2.so-net.or.jp    

連絡先:東京;〒102 千代田区 1-10-2 一番町Mビル
         シェリング・プラウ  佐藤 浩 Tel 03-3263-3421
    神奈川;〒226 横浜市緑区中山町 306-5 静銀日生中山ビル3F
          シェリング・プラウ 三宅祐一 Tel 045-931-3801


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