複数の疾患を考える場合

所見が陽性の場合のそれぞれの疾患の事後確率の比は、事前確率とそれぞれの疾患における所見陽性率を掛け算した値の比になる。ベイズの定理における分母は共通なため、無視することが出来る。

P(D0+|S+):P(D1+|S+):…:P(Di+|S+):…:P(Dn+|S+)
= P(S+|D0+)P(D0+):P(S+|D1+)P(D1+):…:(S+|Di+)P(Di+):…:P(S+|Dn+)P(Dn)

P(D0+|T+):P(D1+|T+):…:P(Di+|T+):…:P(Dn+|T+)
= P(T+|D0+)P(D0+):P(T+|D1+)P(D1+):…:(T+|Di+)P(Di+):…:P(T+|Dn+)P(Dn)


症状S陽性あるいは検査T陽性になる疾患のうち、事前確率が非常に低い場合にはそれを無視しても大きな誤差は出ない。

実際にこのような計算をしなくても、医師は直感的に次のように考えている。

・頻度の高い疾患で、陽性率の高い所見が陽性の結果の場合に、その疾患の可能性が一番高い。
・所見の陽性率が高くても、もともとその疾患がまれな疾患であれば、所見が陽性の場合でもその疾患の可能性は低い。
・頻度の高い疾患であれば、所見が陰性でもまだその疾患の可能性があると考える。
・頻度の高い疾患であれば、陽性率の低い所見が陰性の場合でも、まだその疾患の可能性があると考える。
・その疾患で陽性率が高く、他の疾患や健常者では陽性率の低い検査を重要視する。