時間得失法 Time trade off

時間得失法(TTO)では、健康を損ねた状態でy年生きられる場合に、もし完全に健康な状態で何年生きることができたら同じ価値があると考えるかと尋ねる。完全に健康な状態でx年生きることができれば、健康を損ねた状態でy年生きられる場合と同等であると考えた場合には、その健康を損ねた状態で生きることの期待効用はx/yとなる。

別の言い方をすると、健康を損ねた状態でy年生きられる場合に、もし完全に健康で生きられるとしたら何年短くても良いと思うかをたずねる。もし、z年短くても完全に健康であればそれでもよいと考えれば、健康を損ねた状態で生きることの期待効用は(y−z)/yとなる。この場合、y − z = xである。

たとえば、膀胱癌で開腹手術を受け、膀胱摘出をおこない、人工膀胱を作るとする。この様な手術を受けることの期待効用を決める場合には、たとえば、この手術を受けると10年生きられると仮定する。もし、何もしないで、完全な健康を回復することができるとすると、何年生きられれば、良いと思うかをたずねる。痛い思いをして手術を受け、その後は人工膀胱で日常生活が少し制限される。そういう状態で10年生きられるのと、完全な健康で何年生きられるのが同じと思うか。もし、8年完全に健康で生きられれば良いと思えば、期待効用は8/10=0.8 (80%)ということになる。この場合、2年短くなる分は、手術を受けることに対して、Trade-offした、つまりあきらめた分ということになる。