脳動脈瘤に対する治療選択:Decision Treeの1例

これはあくまでも一つの例であるが手術をしない選択肢のEU(Expected Unitlity,期待効用あるいは効用値)は次の式で求められる:

手術をしない選択肢のEU = (60.2 × 0.55 + 90.1 × 0.15 + 100 × 0.3) × 0.29 + 100 × 0.71 = 93.3

同様に手術をする選択肢のEUは次の式で求められる:

手術をする選択肢のEU = 0 × 0.02 + 75 × 0.06 + 100 × 0.92 = 96.5

この結果からは、手術をする選択肢の期待効用が高いので、手術をすべきであるという結論が得られる。

しかし、手術をしないで、破裂が何年か後に起きて、死亡する分枝に対するEUをどう評価するかは難しい。もし、手術をしないで、破裂も起きずに、45歳の女性の平均余命まで生存するとする、たとえば、80歳まであと35年生存するとしよう。一方で、脳動脈瘤の破裂が診断後平均で21年後に起きる仮定すると、21÷35=0.6となるので、手術をしないで、破裂が何年か後に起きて、死亡する分枝に対するEUを60とするのは、妥当かもしれない。また、手術を受けて、すぐに死亡する分枝に対するEUを0とするのは妥当と思われる。

障害が残る場合のEUについては、何年かたってから、破裂して障害が残る場合には、それまでの期間普通に生活できるので、手術を受けてその後から障害が残る場合に比べれば、EUが大きいのは妥当であろう。しかし、それぞれのEUをいくつにするかは、主観的な要素が大きいので、患者によって異なる値になるであろう。

また、チャンス節(偶発節)における、それぞれの分枝の起きる確率も施設により異なる可能性があり、95%信頼区間といった一定の幅を考える必要がある。

そこで、EUと分枝の起きる確率の値を変更しながら、最終的な選択肢のEUがどのように変動するかを検討する必要がある。それを感度分析 Sensitivity Analysisと呼ぶ。

(文献[2]より翻訳して引用)