医療システム

モデルを組み合わせて全体として機能するようにしたものがシステムである。システムは実世界の動態を説明するために実世界から抽出したものか,あるいは特定の目的を持った規範型としてデザインされた構造物である。システムは一定の構造,動態(行動形態),機能を持っている。システムは環境中に埋没しており,任意で,目的を持っている。情報システムは一連の活動を遂行するために開発され,その機能はモデル作成modelling,測定measurement,運用managementのサイクルの繰り返しによって特徴づけられる。

たとえば,喘息の治療に関するガイドライン(Global Initiative for Asthma:http://www.ginasthma.com/ を参照)では,患者の症状,ピークフロー値に基づいて,Step 1から4まで分類し,それぞれのステップに対して,長期予防的治療Long-term preventiveと急速緩和治療Quick-reliefが決められている。これはモデルであり,多くの喘息患者のデータとそれからもたらされる情報に基づいて作られたモデルである=モデル作成。これを実行する場合には,{喘息の診断をし,患者の症状をとらえ,ピークフローを測定し}=測定(すなわちモデルに合致するかどうかを測定して決め,患者の状態を測定する作業),{その結果に基づいて,治療を行う}=運用する(すなわちモデルに従って,現実世界に働きかける)。その結果,患者の状態がどうなるか観察し,モデルに照らし合わせて,治療効果を判断する。これは喘息患者がよりよい状態で生活できることを目的にしたシステムである=特定の目的。たとえば,高血圧の管理を目的にしたものではない。また,このシステムをすべての喘息患者にそのまま厳密に適用する必要はなく、その使用は医師と患者の任意性に任されている。このシステムは患者や医師の手のひらに乗っているわけでもなく,ガイドラインとして本の中,あるいはホームページ上に書かれてはいるが,実態としては環境中に埋没しているといえる。このように,このシステムはModelling→Measurement→Managementの三つの要素がサイクルを描いて,機能している。

医療ではさまざまなシステムを用いているが,多くのシステムは固定されたものではなく,新しい医学的知見によって,フレキシブルに変更されていくものである。

図1システム。情報システムは3つの要素のサイクルで一連の活動を遂行する。